
「君、もしかして、色盲なんじゃない?」
20代の頃、エアスプレーの教室に通っていた頃に先生に言われた一言だった…
私はこの頃、筆以外での表現方法を学ぶためエアスプレーで色を吹き付けて作品を作る事に興味を持っていて、グラデーションや、独特なぼかし、それが楽しくて通っていた
「色盲なんじゃない?」
思いもよらない一言だった…
人生で初めて言われた言葉にとっさに「違いますよっ!」と言い返してしまった…
先生は「ああ、いや…色の使い方が独特だからさ〜。もしかしたらそうなのかなって、ちょっと思っただけだよ」
先生は軽く笑いながら言ったが、からかっている様子はなく、純粋に疑問に思って口に出てしまったのだろう…
しかし、私の心はザワついていた
「色盲………?私が?」
これまで、自分の色の見え方を疑った事はなかったし、幼い頃から塗り絵が好きで何の違和感もなく色を選んできた
でも、もしかして、私は人と違う色を見ているのだろうか?もし、本当に色盲だったら正しく色を使えていないのかもしれない……
以来、「自分の色の見え方」について疑問を持つようになっていったのです
色盲とは?そして…
あの言葉以来、私は不安から色々調べてみた…
そして、「色盲」や、「色覚異常」と呼ばれるものにはいくつかの種類がある事がわかった
人間の目には光を感じる細胞があってそれが赤、緑、青の光を感じ取る事で色を認識しているらしい。
しかし、何かの理由でその細胞の働きに偏りがあると、ある色が上手く認識できなかったり、違う色に見えたりする事がある
これは生まれつきのものが多いらしくて、本人が気づかないことも珍しくないと…
「もしかして、私も………?」
でも、私は正式な診断を受けていない…ただ、先生に言われた言葉がずっと引っかかっているだけだ。
しかも、普段の生活に不便を感じた事もないし、色の違いで困った事もない。
絵を描く時も「変な色だな」と感じる事もなかったのです
それでも…「もしかしたら、本当に違う色が見えているのかもしれない。今までずっと気づかなかっただけで、ずっと"普通とは違う色"を選んできたのかもしれない…
調べてますます不安に襲われた
「正しい色」に縛られる
それからというもの、不安をかき消すために私は色の勉強を始めた
色相環を学び、補色や類似色、暖色、寒色の関係を頭に叩き込む。そして、絵の具のチューブに書かれた色の名前をしっかり確認して「正しい色」を使おうと努力していた
この絵にはこの色を使って…あの表現にはこの色だな…
私はいつの間にか色を使う事に慎重になっていたのだ…
しかし、描けば描くほど、どこかしっくりこない…確かに理論上は合っているんだけど描いていても全然楽しくない!
「これは本当に私の絵なんだろうか…?」
そんな疑問が浮かぶようになっていた
以前の私は好きな色を直感で選び楽しく描いていた…しかし、今は「この色は合っているのかな?」と考えながら塗るようになっていったのです
その結果、どこかぎこちなく無難な色使いばかりになっていった
「"正しい色"を選べばいい絵になる」と思っていたが、なぜか絵がつまらなくなってしまっていたのでした
先人から学ぶ色の世界
私は美術館にいた
もう自分の絵というものがわからなくなっていたからだ…
何かヒントや、気づきはないかとすがる思いで立ち寄っていた
中へ入るとそこに並ぶ絵画たちは色鮮やかで、どこか重厚感や軽やかさも感じる…
そして、何より自由な色がそこにはあった
白い花には黄色やオレンジが混ざっていたり、夜空には黒だけでなく深い青や紫、緑?も混ざっているように見えた
「そうか、見えている世界を描けばいいんだ」
その時私の中で何かが弾けた気がした
今まで正しい色を求めすぎていたのかもしれない…
本当に大事だったのはどう感じてどう表現するのかではないだろうか?と…気づく事ができた
感じる色で描く楽しさ
それから私は少しずつ感じる色、自分が見える色を信じるようになっていった
影にはさまざまな紫、青、緑を使い、ピンクや、赤、オレンジいろんな色の組み合わせを試してみた
すると、初めは違和感があったけど、だんだん描いていくうちに「これでいいんだ」と思えるようになっていた
そして、正しい色を知る事は無駄ではなかった事も知った
今まで得た色の知識と、自分が心地いいと感じる色を大切にする
そうすると、正しい色と、感じる色を組み合わせる事ができるようになっていたのだ
違う世界が見えてるだけ
数年後…
「この色合い独特で鮮やかでいいね!」
そんな言葉をいただく事が増えていった
正直、私は驚いていた
以前は「正しい色を使おう」と努力しても無難な絵しか描けなかったのに、「感じる、見える色」を使う今の方が魅力的に見えるらしい
今ならあの先生に言われた言葉に対して答える事ができる
「私はただ、違う世界が見えているだけです」と…
もしかしたら、私の色の見え方は他の人と違うのかもしれない。でも、それは「間違い」ではない
違うからこそ、私にしか描けないものがある
違いは強さに変えられる
かつて「色盲なんじゃない?」と言われた時、自分にとってはマイナスな言葉に思えました…
もう、絵を描いてはいけないんだと想うほどの衝撃的な言葉でした…
でも、今は違います!
人と違う見え方をしているのなら、それは大きな個性だと。
私の色使いは誰とも違うからこそ、価値があるのだと。
もし、昔の私のように普通と違うのでは?と悩んでいたら、伝えたい。
「違う事は間違いではない。それはあなただけの強みなんですよ」
正しさに囚われるのではなく、自分にとって心地いい色を大事にしていけばいい。それはきっとそこにしかない世界が生まれる選択なんだから。
自分の見える色を信じることで、私はやっと本当の自分の絵を描けるようになった
だからこれからも、私の色で私だけの世界を描いていく